Locus ~stories ~

主にありふれたシチュエーションをモノローグみたいな感じの書いてるポエムです。

待ってる時間

うん、分かった。
じゃ、その時間でね。

そう言って、あたしは携帯の通話を切る。

話を聞いてた母さんから、ひょっとしてデートの約束って聞いてきた。
あたしは言葉を濁しながら、そんなんじゃないからって言う。
だって、そうだよって言おうにも父さんが睨んだような感じの目であたしを見てるんだもん。

すると、父さんが今は携帯があるからデートに行く約束するにしても楽な時代になってるなぁって言い始めると母さんもそうですよねって答える。

あたしは父さんに父さんが付き合ってた時代はどういう感じだったのって聞いてみる。

そう言えば、アナタはアタシをかなり待たせてたよねって母さんが言い始めると父さんはそうだったかなってとぼけた振りをして言い逃れている。

あたしは母さんとかって携帯とか持って無かったのと尋ねると、あるにはあったらしいけど一般的に普及してなかったらしい。

じゃ、父さんと母さんってデートとかの約束ってどうやってのって聞くと、母さんは勿論家の電話よって言う。

すると父さんは電話がかける自体がハラハラしてたもんだと言うと母さんもそうよねって頷く。

あたしはなんでって聞くと母さんも父さんも親が電話に出ないかどうかで緊張したもんだと答える。

あたしはますます頭にハテナマークが浮かんでくる。
それがどうしたのって聞けば、母さんも父さんも苦笑いしながら、だって親が出たら取り次いでもらえないかも知れないじゃないって言う。

あたしはふーんって思いながら、じゃデートする日とかはどんな風だったのって尋ねる。
父さんはそんなの待ち合わせに決まってるじゃないかと言うと母さんはアナタはよく遅刻してたよねって笑う。

そんなの電話すればいいじゃんって言うと父さんはオマエはバカかって感じで携帯なんて無かったんだと言う。

あたしはそれを無視して母さんは父さんを待ってる時間ってどうしたのって聞くと母さんはそれはドキドキしたり、心配したりしてたのに決まってるでしょって言い切ると父さんはバツの悪そうな顔になる。

あたしは母さんにドキドキするのは分かるけど心配って何のって聞くと母さんは勿論父さんが事故とか遭ったりしてないかじゃないって言う。
母さんは待ってる時間に救急車とかパトカーとかサイレンを鳴らして通ったらそれは心配したのもよって話す。

すると父さんはそれは本当に若い頃からオマエに心配を掛けさせてばかりさせてしまって済まないなぁって謝る。

あたしはそれが何故か新鮮な空気が見えた気がした。

確かに携帯が有って好きな人と話したりメールとかで何時でも連絡は取れるから、父さんや母さんが付き合ってた時代の様なドキドキや不安感とかはそんなに多くはない。

そっか、待ってる時間ってそんな感じでいるのも良いかも知るないとちょっとだけあたしは思った。